歯の構造

歯の構造
歯の表面は硬いエナメル質と呼ばれるガラス質の組織で覆われており、歯に付着した汚れ(プラーク)は糖を分解する際、酸を産生しpHを下げる事により歯の表面が脱灰し、カリエスになります。この時点で冷たいものや熱いもの、甘いものにしみるようになり(誘発痛)が出て、やがて歯の神経(歯髄)に達するように深くなると刺激が無くても痛みを感じるようになります(自発痛)。そのまま我慢して放置すると痛みを感じなくなりますが、もう歯の神経が死んでしまい 歯の外の骨に向かって感染が始まっている状態です。歯の神経は根っこの先端から通じており、骨との境目まで綺麗に取り残し無く死んでしまった神経の残骸を掃除してやらなくては、将来的に膿を持つ事になります。ある時突然はぐきが腫れた、歯が浮いて物が噛めない、知らず知らずのうち骨の中で進行し間違いなくそうなります。また反対に歯周病が進んで急性発作を起こし、根尖から歯の神経に感染をきたす場合もありますが神経の治療は同じ方法です。

歯質感受性

成熟したエナメル質の脱灰が始まるpHは、5.5~5.7ですが、幼弱永久歯・乳歯及び露出した象牙質(根面など)では5.7~6.2で脱灰が始まります。

プラーク(歯垢)

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プラーク付着による歯肉炎

概要

歯の表面に形成されたプラークの約75%は細菌です。プラーク1g当りの細菌数はおよそ1~2×1,000,000,000,000と言われ300~400種の細菌が棲息しています。飲食後に歯に付着した糖質を細菌が分解しその際 産生される酸によりpHが下がり歯の表面は脱灰(溶けて)していきます。それを防御 阻害する為に正しいブラッシングが必要となります。プラークは成熟するとバイオフィルムと呼ばれる膜を持ち細菌の抵抗力は10~1000倍 落としにくくなります。ハブラシ、デンタルフロス、歯間ブラシなどを用い徹底したホームクリーニングがプラーク内細菌から歯を守るのです。写真はプラークが貯まり歯肉が赤く炎症を起こしている状態です。ここまでならまだホームケア、プロフェッショナルケアにより健康なピンクの状態に戻ります。 歯周病もブラッシングなどのオーラルケア不足が原因です。歯に付着したプラークはやがて唾液中の成分ムチンにより石灰化し歯石へと変化します。歯石は歯と歯ぐきの境目より根先方向(歯の根っこ方向)へ増殖しながら歯ぐきを圧迫し、炎症(出血や腫れ、排膿)を伴いながら歯槽骨の吸収を引き起こしていきます。こうなれば歯はぐらつきや噛みしめ時の痛みを感じる様になります。 余談ながら、よく「出産すると歯からカルシウムをとられ歯が悪くなる」と聞きますが一旦形成された歯からカルシウムが抜けるというのは考えにくいし科学的根拠はありません。この関連は主に妊娠中のホルモンバランスの変化や歯の手入れが体調などによって億劫になりやすい、またこれらの理由により口腔内が酸性になりやすい事など、出産後も暫く体調の整うまでは歯科医院を訪れ検診やケアが出来ない事などが原因じゃないかと考えられてます。

プラーク内細菌

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位相差電子顕微鏡写真

細菌

う蝕原性細菌には、主に「mutans streptococci」と「lactbacilli」の2つがあり、強い酸を産生することと自ら作り出した酸性環境に強い抵抗性を持つ(好酸性)という共通の特徴をもっています。食事により細菌は糖質を摂取し、代謝する事により酸を産出。特にスクロース(ショ糖)が供給される事により、不溶性グルカンを作り強固に歯面に付着し、これによりプラークは成熟します。

唾液の浄化作用

唾液の浄化作用は、食事により摂取された炭水化物や糖の浄化、プラーク中で生産された酸の浄化、口腔内に残留した唾液とプラークのpHを中性にする働きがあります。 糖濃度の高い飲食物の高頻度摂取により、口腔内は常にプラーク内細菌が活発に活動する環境にさらされてしまいます。飲食の後のブラッシングの意味はこの環境を改善する事にあります。また就寝時には唾液の分泌が悪くなり同じく環境が悪化する為、「寝る前に歯磨き」は必要なのです。

象牙質知覚過敏

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概要

歯周病等で歯肉の退縮が起こると象牙質が露出し、さらに間違ったブラッシングによる磨耗、プラークの 代謝産物による脱灰などで、象牙細管が開口します。(象牙質は例えていうならストローを束にしたような組織構造) そこに様々な刺激(冷水等の温度刺激、ブラッシング等の機械的刺激など)が加わるたびに開口した象牙細管の内溶液が移動し歯髄神経が刺激され、歯がしみます。これが象牙質知覚過敏です。この開口した細管を何かで封鎖してやれば理論上は止まる訳ですが、慢性的に刺激を受けていると歯髄神経が充血傾向に移行しており、また欠損部の封鎖もミクロ単位の精密さを要求される為、難しいです。欠損がない場合はフッ素系薬剤を用いることが多いです。

口臭

統計によれば口臭を気にする人は成人の約80%だそうです。 口腔内には常在菌として何百億という細菌が存在していますが、ブラッシングなどのケアが悪いとこれらの細菌が食べかす等の汚れを分解する際口臭の原因となる臭気成分を発生させます。メチルカプタン、硫化水素、ジメチルサルファイドという3つの揮発性硫化物ですが、これは下水管等の悪臭の原因と同じものです。

生理的口臭

起床時や空腹時、疲労、緊張などの際感じる口臭を生理的口臭といいます。唾液の分泌が悪くなり細菌が増殖した為に口臭レベルが高まるもので、ハミガキやうがいで解消できるものです。

病的口臭

治療の必要のある疾患や機能低下、改善すべき原因があるものを病的口臭といいます。特に舌表面に付着した汚れ(舌苔)は最大の原因です。舌表面を傷つけないよう軟らかいブラシで汚れを落とす事が必要です。また歯周病やカリエスも口臭の原因となります。ブラッシングが悪いとプラークが取りきれず酸素供給のない歯垢の深層部で嫌気性菌が増殖します。この嫌気性菌は歯周病を進行させ破壊された組織や血球等の蛋白成分を分解し悪臭を発生させます。これには歯科医院での治療と毎日のケアを怠らない事です。他にはダイエットや薬の副作用で唾液の分泌が減少し口臭が強くなる場合もあります。

心因性口臭

生理的な口臭以外は認められないのに気にしすぎて口臭が悪化する場合があります。口臭を気にしている成人80%の内、実際に口臭のある人は20%程度に過ぎないと前記の統計にも出ていますが、きっちりしたケアのあとは気にしすぎないことです。